しかも相当程度の不具合が旧姓を併記することで既に解消済みである。だのに夫婦別姓を叫ぶ、筆者に言わせれば日本を壊そうとする者らは「これが問題だ」との具体事例を決して示さない。示せばどれも、個別に旧姓併記を可能にする措置をすればことが済むからに相違あるまい。

漱石は代表作の一つ『草枕』を、「山路を登りながら、かう考へた。 智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」と書き出した。初出の『新小説』発行は、三重吉への手紙から3ヵ月経ち、三重吉が上京した1906年9月であった。