マントン氏の論文では、再エネで100%系統に電力を供給するためには、どの程度の容量の蓄電池が必要か、シミュレーションしています。「再エネ100%は可能!」とか何の根拠もなしに書かれている論文がたくさん存在します。その無謀さを説明してみたいと思います。

2. 3日間曇りの日が続いても供給できる蓄電池容量

図1は2022年9月18日台風14号が九州地方を縦断した日の九州電力管内電源別発電実績です。水力を含む再エネの出力のみに着色してあります。日射量が少ないですから太陽光発電は少なくなっています。風は強いですが、風力発電は風車を保護するために止めなければならず、少なくなっています。水力発電も河川流量が多すぎると運転できませんから、こちらも出力が下がっています。

図1 九州電力エリア電源別発電量および需要実績(2022年9月18日)

エリア需要と再エネの発電量との差は蓄電池から供給しなければなりません。マントン氏の論文では、このような日が5日間続くと想定しています。私は遠慮して3日間続くとします。

・9/18に必要な蓄電池供給日量 16,409万KWh × 3日 = 49,229万KWh・・・①

次に上記の電力量を、2日間で充電するために必要な太陽光パネルの量を計算します。当然、当日の電力を供給しながら充電しなければなりません。図2は同じ九州電力管内で太陽光発電がフル稼働したと思われる、2024年7月9日の電源別発電実績です。

・7/9の太陽光発電日量 5,682万KWh ・7/9を全量太陽光発電で供給するのに必要な太陽光発電日量 19,738万KWh

ちょっと、乱暴な計算にはなりますが、2022/9/18のような状態の日が2日間続いたとします。その供給に必要な電気を前の2日間で蓄えるとして必要な太陽光発電日量を計算します。太陽光以外の発電は2024/7/9の実績を用います。

・49,229/2 + 5,682 + 19,738 = 50,034万KWh・・・②の太陽光発電量が必要となります。 ・50,034万KWh ÷ 5,682万KWh = 8.8倍