「巨人の種族」は存在したのか?

 SNS上では、単なる個別の巨人ではなく、「巨人の種族がいた」という説が語られている。この説には一部の科学的根拠があるものの、完全に証明されたものではない。

 研究によれば、AIP遺伝子という特定の遺伝子が巨人症の原因となる可能性がある。この遺伝子は特にイギリス諸島西部や北アイルランドで多く見られる。この地域では古くから巨人伝説が語り継がれており、18世紀にロンドンで生きていた「アイルランドの巨人」チャールズ・バーン(身長231cm)の骨を調査したところ、彼もAIP遺伝子を持っていたことが判明している。

地球には“巨人の種族”が実在したのか?科学が解き明かす真実と伝説
(画像=チャールズ・バーン(中央の人物) 18世紀当時の挿絵 画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

 興味深いのは、この遺伝子を持つ人々の系譜を追跡したところ、現在の北アイルランドに住むキャリアの全員が、約2500年前の共通の祖先に遡ることができるという点である。つまり、特定の遺伝子によって「巨人」が生まれやすい集団が存在した可能性は否定できない。

 しかし、これはあくまでも「特定の地域で高身長の遺伝子が受け継がれた」というだけであり、聖書の「ネフィリム」や神話上の巨人のような別種の人類が存在したわけではない。実際、AIP遺伝子を持つ人の中でも、巨人症を発症するのは20人に1人程度であり、この遺伝子が100%発症に結びつくわけではない。