3つ目に短期売買の課税を更に引き上げること。日本では現在、5年未満の売買には通常の税率のほぼ2倍、つまり所得税と住民税の合算では通常の20.315%が39.63%の税率適用になっています。これを私は50-60%ぐらいまで引き上げてもよいと思います。
私が87-89年ごろに日本で開発事業本部に在籍した時、バブルで謳歌をしていたわけですが、バブル崩壊の足音も当然聞こえてきていました。その中で一般的には三重野日銀総裁悪玉説が言われています。もちろんそれもありますが、実務の真っただ中にいた者としての強い印象があったのは国土法改正で短期売買への厳しい規制とルール制定でした。
あの頃は地上げが不動産開発事業の基本中の基本だったわけですが、地上げは通常、地上げ屋に土地を買収させたあと、仮置きの会社に土地を一旦、抱かせるのです。それこそ全く目立たない会社、山田商事とかスズキ不動産といった適当な会社を作って一時所有させるのです。理由の一つは大手のデベの名前だとバレてしまうからです。
大手開発業者は地上げ屋に土地買収代金を実質的に提供しているのですが、その担保として登記なんてしないのです。バレるからです。そのため登記留保という手法で登記簿謄本を見ても誰だかわからない会社が担保なしで持っている形にします。地上げが全部終わり、地形(じがた)が整ったときに一団の土地として開発会社に所有権を移すのです。登記なしで危なくないのか、と思われるでしょう。私の時は地上げ屋の実印から通帳まで全部私が押えていました。
ところが改正国土法は短期売買に制約をはめたのでこれを邪魔し、地上げが非常にやりにくくなったのです。開発の実務者から見ればあの国土法改正は恨み節そのものなのです。
あの当時の実務を知っている人はほとんどがリタイアしていると思いますが、短期売買規制はそれぐらい効果があるのです。今、一部不動産の過剰な加熱を冷やすという点で見れば短期売買の課税強化と不動産取引の報告義務を課し、不動産売買を面倒くさくすることで投資家の気持ちを萎えさせることが可能です。