史料批判を通じてオープンレターの内実に気づくチャンスは、それなりにあった。まずそもそも同レターは、文言としては以下のように謳う。
誰かが、性差別的な表現に対して声を上げることを「行き過ぎたフェミニズムの主張」であるかのように戯画化して批判すると、別の誰かが「○○さんの悪口はやめろ」とリプライすることがあります。 こうしたやりとりは、当該個人を貶めるために、「戯画化された主張を特定個人と結びつける」手法としてパターン化されています。 そこには、中傷や差別的発言を、「お決まりの遊び」として仲間うちで楽しむ文化が存在していたのです。
段落を分け、強調を付与
もちろんそうした品位を欠くコミュニケーションは、誰がやるにせよ褒められたものではない。ところがオープンレターが炎上する過程で広く知られたとおり、当のレター自体の署名欄でも、そうした「遊び」は行われていた。
ネットの「ネタ」として著名な架空の大学名を使い、「社会学部 学部生」とまで添えて「千田由紀江」と記入したのは、実績ある社会学者でフェミニストながらオープンレターの呼びかけ人たちと対立してきた、千田有紀氏への中傷行為であることは明白である。
上記の2022年1月19日の告発記事が載り、オープンレター自体がどういった「コミュニケーション」の場であったのかが明白になって以降に、署名を撤回することは十分に可能だった。それを怠った歴史学者に、史料批判や、ましてオンラインでの人権について云々する資格はない。