また、核融合炉のように超高温プラズマが飛び交う場所や、磁力線が入り乱れる実験施設の中でも、重力波ならほとんど干渉を受けません。

これは将来的に、極限的なエネルギー環境を研究する物理実験や、深海や火山深部の観測など、地質・地球科学の分野でも大きな役割を果たすかもしれません。

宇宙探査と深宇宙コミュニケーション

重力波の最大の魅力の一つは「星の内部を貫通するほど相互作用が弱い」ことで、宇宙空間でも長距離通信に使えそうだという点です。

電波なら星間ガスやダストなどが邪魔になるところ、重力波なら銀河系を越えても減衰がほとんど起きない、と理論的には言われています。

将来、人類が太陽系を越えた深宇宙へ飛び立つ時代が来るかもしれません。

そのとき、数十光年も離れた探査船に向けて電波を飛ばしても、途中で弱くなってしまう恐れも大きいです。しかし重力波通信なら、通信が途絶えるリスクを大きく減らせる可能性があります。

何十年、何百年かかるロマンあふれる星間航行でも、地球と探査船が“時空のゆらぎ”を通じてつながっている――そんな未来像はSFの世界そのものです。

科学研究への貢献

重力波通信は、「通信が成立する」ということ自体が、同時に重力波の性質を深く知ることにつながります。

時空がどうやって波打つかを精密に測ることで、まだわかっていない宇宙の姿や、量子重力と呼ばれる理論的な難問のヒントも得られるかもしれません。

さらに、いまは観測にばかり注目されている重力波ですが、通信に応用するために「発生」「増幅」「制御」「復調」などを探究することで、相対性理論や宇宙論の新しい実験的検証方法が生まれる可能性があります。

もちろん、現状の技術では重力波通信を本格的に運用するにはあまりに大きな壁があります。

重力波を人工的に作り出すには莫大なエネルギーが必要だし、受信側も信号が超微弱で、ほとんどノイズに埋もれてしまう。通信レートもごく低いのが難点です。