炎症やアレルギーは普通、人体の過剰な免疫反応によって引き起こされるものですが、この免疫システムが過度に働いてしまえば、寄生虫までもその攻撃目標になってしまいます。
そこで寄生虫は宿主の免疫反応を弱めることで体内で生き延びるのですが、これが体内炎症やアレルギーを緩和してくれる引き金となるのです。
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実際、イギリスのある医学研究所では、花粉症持ちが意図的に鉤虫(こうちゅう)を体内に取り込んだところ、花粉症の症状が軽減されたことが報告されています。
そして寄生虫を体内から排除すると、再び花粉症はひどくなり始めたのです。
これ以外にも、糖尿病になりやすくしたマウスに住血吸虫の抽出物を与えたところ、糖尿病を発症しなくなったりとか、アフリカ人集団を対象とした研究で、住血吸虫の感染者は糖尿病やリウマチを滅多に発症しない証拠などが見つかっています。
寄生虫は何かと悪者に見られがちですが、場合によっては私たちの強い味方になってくれるのです。
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参考文献
In 1944 A Physician Infected Himself with Parasites for Research
https://journal.medizzy.com/in-1944-a-physician-infected-himself-with-parasites-for-research/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部