炎症がひどくなると臓器に必要な血流が阻害され、命を失う危険まで出てきます。

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クロード・バーロウ/ Credit: BioOne – Claude Barlow: A History of Self-Experimentation(2023)

それでもバーロウはまったく怯みませんでした。

3週間かけて住血吸虫を4回飲み込み、アメリカ行きの飛行機に搭乗。

その時点ですでにバーロウの体には異変が起こっており、大量の汗と目眩のほか、食欲もなくなっていました。

アメリカに着いてからは血尿と下血が始まり、耐え難いほどの痛みを伴う膀胱炎を発症。

20分おきに排尿しなければならず、ほとんど眠れなくなりました。

さらに40度の高熱が続き、バーロウの体からは1日に1万2000個もの卵が排出されたとのことです。

もはや研究どころではなく、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていました。

バーロウはついに薬による治療を始め、なんとか一命を取り留めたものの、完全に弱り切ってしまい、実験は断念してしまったようです。

ここまでの話を聞くと、多くの方は「なんて恐ろしい、寄生虫なんて絶滅すべきだ!」と思われるかもしれません。

しかし寄生虫の大半は無害であり、なんなら中には人体にとって有益なものもいるのです。

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寄生虫は何万年にもわたって人類と共生してきました。

考えてみれば、寄生虫とはその名の通り、宿主の体を間借りする居候(いそうろう)なわけですから、借家をメチャクチャにしてしまっては自分たちも絶滅してしまうだけでしょう。

なので寄生虫にとっては宿主に健康でいてもらった方がいいわけです。

実際に人体に対して悪さをする寄生虫は一部であり、そのほかの大半はほとんど無害か、むしろ宿主を健康にしてくれる場合もあります。

例えば、これまでの研究で、寄生虫は人々の体内炎症やアレルギー反応を緩和してくれることが示されています。