しかし「俺、サナダムシ食べてもいいよ!」なんて人が都合よく見つかるはずもありません。

途方に暮れていたキュッヘンマイスターでしたが、そこへタイミングよく「死刑囚を実験に使えばいい」との申し出がありました。

「そいつは名案だ」と考えたキュッヘンマイスターは、死刑囚に与えられるソーセージとスープの中にサナダムシの幼虫を仕込んだのです。

自分が実験台にされているとも知らず、その死刑囚は「おい、スープが冷めてるぞ!」と文句を言ったといいます。

それもそのはず、熱々のスープではサナダムシが死んでしまい、せっかくの実験が台無しになるからです。

そして刑の執行後に遺体を解剖してみると、死刑囚の腸内から小さなサナダムシが数十匹見つかりました。

キュッヘンマイスターはさらに数名の死刑囚でも同じ実験を実施。

サナダムシの幼虫入りソーセージを乗せたオープンサンドイッチを食べさて、4カ月後の処刑後に解剖しました。

すると腸内から再び成熟したサナダムシ数匹が見つかったため、これらの観察結果を踏まえて、キュッヘンマイスターは「幼虫に汚染された肉を十分に加熱しないで食べることで、サナダムシに感染する恐れがある」と結論したのです。

「サナダムシ飲んでもいいよ!」という人が現れる、一体なぜ?

そんな中、キュッヘンマイスターが驚いたことに「サナダムシ飲んでもいいよ」と自ら志願する人が意外と多く現れたのです。

実はこれには奇妙な裏があります。

当時から寄生虫に感染した人は往々にして痩せていることが多く、ここから人々は「きっと寄生虫がお腹の中で人の食べたものを掠(かす)め取っていくからだ」と誤った迷信を信じたのです。

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サナダムシを宣伝する食料品広告/ Credit: en.wikipedia

この発想の背景には「貧乏人はみんな痩せ細っている。貧乏人のほとんどは寄生虫に感染している。寄生虫に感染すれば痩せる」というおかしなロジックがありました。