「寄生虫」
いやはや、なんとおぞましい響きでしょうか。
怖いもの見たさでつい興味を惹かれてしまう生き物ですが、もし寄生虫が自分の体に巣食っていたらと思うとゾッとしてしまいます。
しかし人類が過去に行った寄生虫研究の話を聞けば、さらにゾッとするに違いありません。
今回は死刑囚の食事に寄生虫を仕込んで人間体内にいるときの生態を調べたドイツの医師や、自ら寄生虫を飲み込んで死ぬ寸前に陥ったアメリカの科学者の話を見ていきます。
目次
- 死刑囚に無断で「サナダムシ」を食べさせた医者
- 自ら寄生虫を飲んで死にかけたアメリカ人医師
- 寄生虫で「花粉症」が治った?実は人間の味方かも
死刑囚に無断で「サナダムシ」を食べさせた医者
寄生虫は世界で数百種ほどが知られていますが、中でも一般に広く知られているのが「サナダムシ」です。
サナダムシは平たくて細長いヒモ状の寄生虫であり(和名は真田紐に似ていることに由来)、人間の腸内に長期にわたって留まります。
過去には、35年間にわたって同じサナダムシが寄生していた男性の症例や、最長で39メートルもの長さにまで育ったサナダムシが摘出された例があります。
サナダムシは宿主の体内で1日に数十万個もの卵を産むとされており、宿主はそれに気づかないまま彼らに栄養を与え、ウンチと共に卵を外に排出しているのです。
サナダムシは人体に対してほぼ無害ではありますが、寄生虫に過敏な人は神経障害を起こして重体に陥る危険性もあります。
そして時は1855年、ドイツの医師フリードリヒ・キュッヘンマイスター(1821〜1890)がサナダムシに関して恐ろしい実験を行いました。
彼は以前から「サナダムシがどのような経路で人に感染するのか」に関心があり、「誰かにサナダムシを食べさせて、体内にいるときの生態を調べたい」との危険なアイデアを抱いていたのです。
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