これはちょうど、普通の測定方法では「満点は11点」と決められているテストで、量子の仕組みを使った測定だけが「11.57点」という不思議なスコアを叩き出したようなイメージです。

4次元(KS18セット)や6次元(KS21セット)でも同様にはっきりと“満点超え”が見られ、量子力学が予言する値とよく一致していました。

つまり、ある量子状態(高次元エンタングル状態など)を文脈性の視点で解析しても古典的限界を破り、非局在性の視点で解析してもやはり古典的限界を破る、ということです。

たとえるなら、同じ食材(実験データ)を使って「文脈性ランチ」と「非局在性ランチ」を作った場合、どちらも古典の常識レベルでは再現できない美味しさ(状態)にあることがわったと言えます。

「本来の“満点”を超えてしまう」という事実そのものが、古典理論では説明しようがない量子の“文脈性”と“非局在性”を裏づけているのです。

実験結果はどのセット(3次元、4次元、そして6次元)でも高い統計的信頼度を示し、文脈性と非局在性という一見異なる2つの量子的特性が、実は同じ本質的な構造を持っていることを示しています。

研究者たちは、今回の研究成果は「もつれた2つの光子が遠く離れていても相関関係を保てるのはどのようなメカニズムによるのか?という量子物理学の長年の疑問に迫る鍵になる」と述べています。

文脈性と非局在性という“二大不思議”を結びつけ、高次元空間でその破れを実験的に示したことは、「量子の世界は私たち人間の古典的な直感をはるかに超えた論理で動いている」という冷酷な事実を改めて示すものと言えます。

ただ人間の直感を超えていても、その現象を利用できないわけではありません。

多次元の量子状態は、一つの光子に大量の情報を“詰め込む”ことができる、いわば大容量の宝箱のような存在です。

そしてこれまでにも量子の文脈性は「魔法(マジック)」と呼ばれる特別な計算能力を支える量子計算のパワー源になり得る資源として解釈されていました。