新テプラの特徴は、文字変換が強化されていることだ。特に、「医療」や「建築土木」の業界の専門用語の語彙が強化されている。例えば

・がんませんすぺくとる →γ線スペクトル ・えすこじぎょう → ESCO事業

など、面倒だった専門用語が一度で変換できる。JAN-13・QRコードなどバーコード印刷も可能となっている。危険が伴う現場での情報提供ニーズは高い。販路獲得という課題さえ克服できれば、十分収益が見込めるのではないだろうか。

左:「テプラ」PRO SR-R560、右:キングファイル Gシリーズキングジムプレスリリースより

M&Aによる規模拡大や、外観デザイン効果への過度な期待は禁物だ。キングファイルは、まだ改良の余地はあるし、テプラの需要増も見込める。同社が傾くと困る企業は少なくない。「二つの柱」は堅実に育てて欲しいと思う。

新社長はクイーンかジョーカーか

今後の戦略について問われた木村新社長は以下のように答えている。

「今までキングジムはテプラとかファイルとか、中心にあるのは機能美だったと思うんです。けれどそれだけでなくて『感性価値』を掛け算をして、新しいスタイルを作っていこうと思います」

キングジム、機能性×感性のデザインへ 32年ぶり新社長|日本経済新聞

社長交代は32年ぶり。創業家以外からの社長就任は初めて。今回、キングジムが引いた“木村美代子”というカードは、多才な「ジョーカー」か。それとも、キングを支える「クイーン」か。

【参考】 『ヒット文具を生み続ける独創のセオリー』宮本彰 著/河出書房新社 キングジム 中期経営計画及び決算資料 他