これまで買収したのは、家電・雑貨を扱う“ライフオンプロダクツ”。家具を扱う“ぼん家具”。インテリア雑貨・造花を扱う“アスカ商会”。キッチン雑貨を扱う“ラドンナ”。キッチン用品や生活雑貨を扱う“エイチアイエム”(22年12月、キングジムとの吸収合併により解散)など。

だが、うまくいっているとは言い難い。

これらのうち、1社が赤字拡大、2社が単独決算で利益減少となっている(※)。同社が吸収したエイチアイエムについては、「のれん減損」1億7千2百万円を計上している。これは、エイチアイエムが「高い買い物」だった、ということを意味する。

※直近決算公告より

この「キングジムグループ」を待ち受けるのは、セリア、スリーコインズ、無印良品、その他強者たちばかり。彼らと渡り合うのは容易ではない。

新社長に就任した木村美代子氏は、どのように挑もうとしているのだろうか?

デザインへの注力

24年9月、キングジム新社長に就任した木村美代子氏は、アスクルの創業メンバーであり、キングジムの文房具ブランド「HITOTOKI」を手掛けた人物である。強みはデザイン力とマーケティング力だ。当然、今後の商品はデザイン重視となる。

キングジムの直近の中期経営計画でも、

「デザイン力で企業価値向上」

という方針を掲げている。国内外のアーティストやデザイナー、クリエイターを巻き込み、関連会社含むキングジムグループの「創る」「伝える」を、総合的にプロデュースするという。

すでにその方針が実践されているのが、氏が手掛ける文具ブランド「HITOTOKI」だ。同ブランドにかかわったデザイナーは約50人。商品のひとつ、「氷の形をイメージしたスタンプ『氷印(こおりじるし)』」は、24年10月にグッドデザイン賞を受賞している。

氷印(こおりじるし)キングジムプレスリリースより

だが、ターゲット層が異なる新市場に新製品を投入するということは、「多角化戦略」を採るということだ。リスクは最も高くなる。これまでのオフィス用品事業と、どの程度相乗効果があるか、測定する必要があるだろう。