「育ててくれたクラブに移籍金を残したい」という高い意識を持った選手が増えたこともあるが、日本国内のローカルルールだった「仲介人制度」が2023年9月末で廃止され、2023年10月から「FIFA(国際サッカー連盟)フットボールエージェント制度」が導入されたことも大きな要因だろう。
サッカー代理人になるには同制度に基づくライセンスが必要で、このライセンスはFIFAが実施する試験に合格した者にのみ付与される。受験資格自体は非常にハードルが低く、中学卒業証明書と受験料100ユーロを用意すれば誰でも受験できる。
元プロ選手はもちろん、サッカーファンのサラリーマン、エンジニア、会計士、公証人、工場作業員に加え主婦や失業者に至るまでが、ビッグマネーを夢見てこの試験に挑むという。試験はマークシート方式で、時間はサッカーと同じ90分間で20問を解く方式だ。
ところが合格率となると平均約8%という狭き門だ。まぐれで合格したとしても、その後には代理人登録にかかる税金、契約交渉を行う前に必要とされる負担金や保証金として、相当な額を納めなくてはならない。
サッカー代理人の主な仕事は、「選手の強みをクラブに売り込む」「選手とクラブの契約条件の調整し適切な契約を締結する」「選手の利益を守る」など多岐にわたり、FIFAでは、選手の移籍の際、売却クラブの代理人、選手の代理人、購入クラブの代理人それぞれに手数料の上限が設定されている。
世界トップの代理人ライオラ氏の場合
例えばセリエAの登録選手数は1,079人だが、FIFAのサイトによるとイタリアで公式認定されている代理人数は選手数とほぼ同数の1,062人だ。スペイン(575人)の2倍、ブラジル(269人)の4倍近い代理人がイタリアには存在することになる。
実際に活動している代理人は約200人といわれ、イタリアで最も成功を収めた大物代理人のミノ・ライオラ氏(2022年4月に54歳で死去)のようになれるのは一握りの厳しい世界でもある。