今や、将来有望な高校生にも付くケースがあるサッカー代理人。ひと昔前は代理人と言えば「サッカー選手を転がせて(移籍させて)、その移籍金の上がりや年俸の一部を掠め取る守銭奴」というイメージがあった。(※未成年選手との代理人契約は、その選手がプロ契約を締結できる年齢に達するまでの6か月間のみ行うことができる)
例えば2011年1月、カタールで行われたAFCアジアカップに出場していた当時の日本代表FW岡崎慎司がブンデスリーガのシュツットガルトに移籍する際、代理人だったロベルト佃氏は岡崎を帰国させずにドイツに向かわせた。岡崎は清水エスパルス(2005-2010)との契約期間が切れる1日前の1月30日に、シュツットガルトの契約書にサインし記者会見を開いた。
契約延長交渉を希望していた清水側は、その間に岡崎とコンタクトも取れず“行方不明”状態に。代理人の佃氏は清水に移籍金を取れることを示唆していたものの、結果的に「ゼロ円移籍」が成立してしまい、騙された形となった清水は激怒。FIFA(国際サッカー連盟)に対し「補償金支払いに対する申立書」を申請し、移籍証明書の発行も拒否した。これにより岡崎のブンデスデビューが大幅に遅れただけではなく、清水は佃氏を出入り禁止とし、岡崎が清水OBとして本拠地のIAIスタジアム日本平へ来場することは、4年後の2015年まで許されなかった。
ここでは、代理人の役割やライセンス取得の厳しさ、併せて日本人選手との関連について考察したい。
ライセンス制度導入で変化した代理人
“ゼロ円移籍の達人”として数多くの日本人選手を欧州に送り込んだ前述の佃氏だが、半面、彼を出入り禁止にしているJクラブは多い。そして現在、このような強引なやり方は通用しない。