そこでジョンは兄ウィリアムが開いていた解剖講座に使う新鮮な遺体を集めるという、血生臭い仕事を一手に担当しました。
そうしてジョン自らも解剖に熱中する中で、兄ウィリアムを遥かに凌ぐ解剖の才能を発揮します。
その後、彼はセント・ジョージ病院の外科医となり、午前中は治療費を払える患者を診て、午後は貧しい人たちを無料で診察する日々を送るようになりました。
さらにジョンは「若い外科医たちをもっと育てなければ」と思い立ち、学生を相手に夜間講座を開きます。
ここでちょっと変わった奇人エピソードがあります。
ある晩、夜間講座に学生が一人しか出席していないことがありました。
するとジョンは骨格標本を一体引っ張り出して席に座らせ、いつものように「諸君」と呼びかけて講義を始めたのです。
彼はその時点で1000体以上の解剖を経験しており、人体の内部について究めて詳しくなっていました。
そして学生たちには「解剖は外科医学の基礎であり、解剖こそが頭に知識を、手に技術を与え、さらに外科医に必要なある種の残酷さに心を慣れさせるのだ」と教えています。
ただ問題はジョンが何よりも解剖を重視したため、解剖の練習用に大量の遺体が必要になったことでした。
そこでジョンは過激な裏の一面を見せるようになります。
ハンターの「悪魔」の素顔? 遺体集めで法を犯す
人が亡くなるタイミングは予測できませんし、そう都合よく遺体は手に入りません。
そこでジョンが目をつけたのは死刑囚の遺体でした。
1752年の法律改正に伴い、死刑執行された囚人の遺体を解剖用に請求できるようになると、ジョンを含め多くの外科医たちが絞首台に群がり始めました。
できるかぎり新鮮な状態の遺体が必要だったからです。
今ではあり得ませんが、その際に囚人の親族との間で遺体の取り合いも起こったといいます。