プロトタキシーテスはさまざまな化石の復元から、細長い塔状に伸び上がっていたことがわかっています。
このように周囲よりも背を高くすることで、胞子をより広い範囲に散布しやすくなり、繁殖を優位に進めやすくなったことが巨大化の要因として指摘されます。
そしてプロトタキシーテスの巨大化を可能にしたのは当時の環境でした。
デボン紀の陸地には小さな節足動物だけが生息しており、大型の脊椎動物も海から陸に進出し始めたばかりで、プロトタキシーテスを脅かすような天敵がいなかったのです。
そのため、プロトタキシーテスはガツガツ餌を食べながら成長し、高さ8メートルにまで巨大化できたと考えられています。
ところがデボン紀を通して昆虫が繁栄の道をたどり、デボン紀が終わりに差し掛かる頃には、地球は「昆虫の惑星」と呼べるほどに多様化しました。
すると俊敏に動くことも逃げることもできないプロトタキシーテスは昆虫たちに食べられるようになり、次第に巨大化も繁殖もできなくなって、ついには絶滅するに至ったのだと推測されています。
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これですべての謎は解けた… かと思いきや、2010年になって再び「プロトタキシーテスは菌類じゃない!」との論争が巻き起こります。
その説を新たに唱えたのは米ウィスコンシン大学マディソン校の植物学者であるリンダ・グラハム女史です。
グラハムは「プロトタキシーテスは菌類ではなく、ゼニゴケだ」と主張しましたが、彼女の言い分はかなり面白い発想力を持ったものでした(NIH, 2010)。
確かにシルル紀末からデボン紀にかけて、地上には原始的なゼニゴケが広範囲にわたって広がっており、湿った地面の上を覆っていました。
グラハムによると、ゼニゴケのくっついた地面が強い雨風など、何らかの環境刺激によってペリッと剥がれ、重力によって坂道の下方向に転がり落ちていき、ゆっくりと丸まっていったという。