一方、日本では安楽死法は成立しておらず、尊厳死法すら成立しておりません。そのような日本において、この映画は安楽死に関して間違ったの印象を与えてしまう可能性があることを、私は危惧しています。
この映画では、生き場所を失った高齢者に国が安楽死の選択権を与えることが描かれています。これでは、まるで姥捨て山です。社会的弱者が国により安楽死に誘導されているように見えます。安楽死反対派が危惧している現象そのものなのです。
社会的弱者が安楽死に誘導されることは許されるべきではありませんが、だからと言って安楽死が否定されるわけではありません。終末期の苦痛に耐えられない時や、人間の尊厳の喪失に耐えられない時に、選択肢の一つとして安楽死があるのです。安楽死は姥捨て山ではないことが理解されないと、日本においての安楽死の法制化は、ますます遠のいてしまうと考えられます。
3.映画「彼女が選んだ安楽死~たった独りで生き抜いた誇りとともに~」(2025年3月公開予定、日本)
2022 年、迎田良子さん(64)が安楽死するためにスイスに渡った。重い神経難病を患ってきた彼女は死の直前、立ち会った記者に語りかけた。「安楽死することは悲しいことではない。やり残したことは何もないし、本当に幸せな人生だったの。やっと夢が叶うのよ」。過酷な幼少期を経て、度重なる困難にぶつかろうとも、たった独りで人生を切り拓いてきた迎田さん。「誰かに頼って生きるなんて嫌なのよ」。彼女はなぜ人生の終わりに、安楽死を選んだのか。
2022年、スイスで安楽死を遂げた日本の女性(64歳)のドキュメンタリーです。概要は Web記事 で知ることができます。
このようなドキュメンタリーは、より多くの国民に視聴してもらうために、映画ではなく、地上波のテレビ番組として放送するべきと、私は考えます。
4.映画「すべてうまくいきますように」(2021年、フランス)