投信業界をサバイブするための「商品構成」「販売戦略」が欠けていた可能性

 加えて、忘れてはいけないのが販売会社の問題だ。深野氏が続ける。

「近年ではITを筆頭に、他業界から金融業界や資産運用分野への参入が続いています。この流れに乗り、PayPayは成功した時の利益最大化を狙って、既存のプレイヤーと提携せず自力で立ち上げる道を選んだ。でもPayPayアセットが連携するPayPay証券には正直、売る力がなかったんです。これがたとえば楽天投信投資顧問であれば、楽天証券という大手ネット証券二強の一角が力を入れて売ってくれるのですから、事情がまったく違うわけです。結果論かもしれないけれども、商品構成にしろ販売戦略にしろ、投信業界のことをちゃんとわかっている人が舵を取っていたのかな? という疑問はあります」

 グループに運用会社を持ってはいないけれども、売る力のある販売会社と組めればまた展開は違ったのかもしれない、と深野氏はいう。

「これは想像ですが、投信の売り方という部分で、インデックス投資は流行っているし金融庁の肝いりでもあるということで、若干高をくくっていた面があったのかもしれません。本来、どんな商品であれ想定する顧客に自社の商品を認知させるためには、コストをかけてありとあらゆる手を打つ必要があるはずです。まず広告宣伝は最初に考慮すべき手段ですし、今どきはインターネット上でインフルエンサーと組んで展開する、インフルエンサーマーケティングだってあります。はたして自社の商品を認知させ、購買につなげるための努力をどこまでしたのか。販社を巻き込んで、投資信託を売るための包括的な戦略を組めていたのだろうか、いなかったのではないか、ということですよね」

 思い返せば、PayPayアセットの親にあたるPayPayは、他のQRコード決済との激しい競争の中で、巨額の販促費用をかけて加盟店にも消費者にも優遇措置をふんだんに行った結果、今の一強体制を勝ち取った。この成功体験があったにもかかわらず、運用会社を育てる時に全く活かされていなかったと解釈することも可能だろう。