PayPayアセットの問題は「顧客のニーズを読み違えていた」こと
とはいえ、NISAの拡充を機に膨れ上がった米国株および世界株式を対象とするインデックスファンドを主力商品としていた同社の事業停止が、個人投資家に驚きと不安を与えた点は否めない。ただし、個人の資産形成に知悉したファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏は、今回の出来事に特に衝撃を受けることはなかったという。
「インデックスファンドは激しいコスト競争が続いていますから、体力勝負に敗れて脱落する会社が出ることは想定していました。PayPayアセットも頑張ってコストを安くしてはいたんだけども、残念ながら若干、顧客のニーズを外していた印象があります」
現在、NISAのつみたて投資枠を主戦場とするインデックスファンドの中では、米国株式の指数(S&P 500)に連動するものと、全世界株式の指数に連動するものが、二強といえるほどの人気を集めている。そのなかでも常に最低コストを目指すことを売りとする、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slimシリーズ」は、運用資産額で抜きんでた存在だ。
深野氏によると、すでにこのような状況が形成されていたにもかかわらず、PayPayアセットが売りにしていたのはダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価、いわゆるNYダウに連動するファンドだったという。同指数は確かに米国株の代表的な指標として、テレビや新聞などで日々報道されているメジャーな存在ではある。とはいえ、インデックスファンドというフィールドにおいては傍流にすぎないため、商品設定および販売戦略において、この点を読み違えたことによるスタートダッシュの失敗は大きなつまずきだったと、深野氏は指摘した。