(※陽的幾何は、数々の物理条件をまとめてう形で表し、その図形的性質を読むだけで重要な物理量が分かる、という優れた手法です。煩雑だった方程式が一つの美しい形に凝縮されるという、エレガントな魅力があります。)

例えるならば、「巨大なデータファイル(粒子の衝突情報)を、きれいに圧縮した多面体のファイルに変換しておき、そこから必要な情報を読み出すだけで元のデータを再現できる」というイメージに近いでしょう。

実際、アッソシアヘドロンを使うと数千行にもおよぶ膨大な方程式がぐっと短縮され、しかも結果が変わらないことが分かっています。

いわば、「複雑な数式を根気よく解くかわりに、決められたルールで作ったポリゴンや多面体の“辺”や“面”、“体積”を読み取れば事足りる」というわけです。

簡単に言えば「全体を覆う多面体の情報に内部の粒子の情報を全てコンバートでき、多面体の測定により内部粒子の状態をも知ることができる」ということがわかったのです。

その多面体の“辺や面、体積”といった幾何学的な性質が、実は膨大な方程式の答えと一対一に対応しているからです。

たとえば「この面に相当するのは〇〇という衝突パターン」「この体積を求めると、衝突全体の寄与が一気にわかる」といった具合です。

(※「もともと広がった空間・データを、よりコンパクトな境界・図形構造に落とし込み、それを読むだけで元の情報が再現できる」という点においてはホログラフィック原理を連想させる仕組みでもあります。)

ここで面白いのは、こうした計算過程でいったん「時空」(座標や時間の情報)を明示的に使わないことです。

“多面体がもつ純粋な幾何学的性質”を頼りにして、「結果的に従来の方程式と同じ答えを導き出す」仕組みを利用しているのです。
実際にやってみると、時空の座標を延々と追っていたよりも遥かにスマートに問題が解ける場合がある。

まさに、宝石のような図形ひとつで、物理学の煩雑な方程式を“置き換えてしまう”かのような感覚です。