コスモヘドラは私たちの時空観をどのように塗り替え、宇宙の仕組みをどこまで明らかにしてくれるのでしょうか?
研究内容の詳細は『arXiv』にて公開されています。
目次
- “宝石のような図形”で物理法則を語ることができる
- 時空の全てを多面体の物語に変換する
- 理論が変える「時空」のとらえかた
“宝石のような図形”で物理法則を語ることができる
「コスモヘドラ(Cosmohedra)」については、まずはまるで“宝石”のような多面体──角ばった結晶のイメージを思い浮かべると分かりやすいでしょう。
このコスモヘドラは現在、宇宙全体の量子波動関数を一挙に再現できるかもしれないという、ちょっと信じがたいほど壮大な狙いをもって研究されています。
といって、いきなり「宇宙の波動関数を宝石の形で表す」と言われても、イメージが湧きにくいかもしれません。
そこでまずは、このコスモヘドラの“前身”ともいえるアッソシアヘドロン (Associahedron)を例に、考え方の大枠を見ていきましょう。
ここではまず空間を飛び回る粒子を、時空を前提とした計算式で表すことからはじまります。
たとえば、私たちが日常で想定している「時空」という座標系を使って粒子の衝突(散乱)を厳密に計算すると、時間と空間の情報を余すところなく書き下さなければならず、その手順は膨大になりがちです。
「いつ」「どこで」「どのように」衝突が起こり、衝突後は「どの向き」に粒子が飛ぶのか……そうした要素をすべて数式で扱うには、莫大な計算が避けられません。
ところが、近年登場した「陽的幾何(positive geometry)」という発想や、高度化したシミュレーション技術の応用によって、最終的な運動量分布を「多面体の形状」として一括管理できることが分かってきたのです。