この範囲には理論的に限りがなく、電子だけでなく、原子、ウイルス、そして人間といった巨大な系にいたるまで、厳密にいえば波動関数を用いて記述可能と考えられています。
したがって、究極的には”宇宙全体をひとつの波”として扱うことも理論上は不可能ではないわけです。
多面体を複雑にしただけで「宇宙の波動関数」のような大それた系まで扱えるようになるというのは信じがたいでしょう。
しかし、理論的には、運動量や因数分解に関する幾何学的なルールを拡張し続けることで、複雑さをさらに高め、ついには全宇宙をも波として記述する試みが視野に入るのです。
実際にそこまで到達できるかは今後の研究次第ですが、少なくとも「数学的・理論的には道が開かれている」という点が、この幾何学的アプローチの魅力といえます。
もしこの試みが上手くいって「宇宙の波動関数」を内包する輝かしい多面体を生み出せるとしたら、それはいったいどんな姿をしているのか?
まだその答えは得られていませんが、宇宙の全てを内包する宝石のような多面体を見たいという人は決して少なくないはずです。
理論が変える「時空」のとらえかた
コスモヘドラのような幾何学的アプローチが示唆するのは、「時空は当然あるもの」という前提をも再考させる大きな可能性です。
一方で、こうした“時空の脱構築”が示すのは「今の物理学を全部捨てる」という極端なものではありません。
あくまで既存理論を包含しながら、その背後にあるもっと根源的な“抽象的世界”を探り当てようという姿勢です。
時空の概念がなくとも、あるいは大幅に抽象化しても、量子力学や相対論の核心である「運動量保存」「局所性」「光速を超えられない」といった基本原理が維持される。
コスモヘドラの幾何学がそれを自動的に満たしてしまうという点は、多くの物理学者に驚きをもって受け止められています。