このINACの弱点は、試合後に筆者の取材に応じた栗島のコメントからも窺える。今回の準決勝は浦和のゲームプラン共有力と、相手の戦術の不備を見逃さない強かさ(したたかさ)が際立った一戦だった。
ー高橋選手へシンプルにロングボールを預けようという意図が、今日の戦いぶりから窺えました。やはりこれは、チーム全体で共有されていましたか。
「試合の入り(序盤)は簡単にやろうという話はしていました。INACの前線の選手の守備は速い(出足が鋭い)と思ったんですけど、高橋選手の前にはスペースがありました。彼女ならアバウトなボールでも収めてくれるだろうと思って、そういうボール(ロングパス)を多用しました」
ーINACの前線の選手の守備には勢いがあるけど、それに後ろの選手(ボランチや最終ライン)が連動できていない感じがしたということですか。
「はい、そうです」
ー高橋選手、塩越選手、島田選手の3人をINACの3バックに当てて、相手のパスを片方のサイドへ追いやる守備をしていましたよね。
「はい。相手のFWスアレス選手へのパスのこぼれ球を拾われるのも怖かったので、ボランチの柴田選手と伊藤選手に後ろのスペース(最終ラインと中盤の間)を気にしてもらいながら守っていました。うちら(栗島を含む最終ライン)と味方FWで距離ができてしまうのは良くないので、ハイプレスというよりかは、お互いに距離感良く守備をしていました」
この試合の終盤には、昨年1月の皇后杯準決勝で左膝前十字靭帯を損傷したMF猶本光が、約1年ぶりに実戦復帰。悲願の皇后杯制覇に向け、浦和の視界は良好だ。