INACのジョルディ・フェロン監督は、前半途中からサンプソンとDF土光真代(ボランチ)のポジションを入れ替える。サンプソンよりも配球力やボール運搬力が高い土光を最終ラインへ下げることで、自軍のビルドアップを安定させる意図が窺えたが、これにより空中戦に強い浦和の1トップ高橋の脅威に晒されるという弊害が生じてしまう。長身DFサンプソンを最終ラインに組み込むことで制空権を握ろうとしたが、前述のポジション入れ替えにより当初のゲームプランがご破産となった。

試合後会見で筆者の質問に応じたフェロン監督は、サンプソンと土光のポジションを入れ替えた理由を明かしている。施した修正は合理的だったが、これによって生じるデメリットを浦和に突かれてしまった。

ー前半の途中から、ヴィアン・サンプソン選手と土光選手のポジションが入れ替わったように見えました。このポジションチェンジの意図を教えてください。また、この修正が監督の目論見通りにうまくいったのか。この点につきましても、監督の評価(振り返り)をお伺いしたいです。

「サンプソン選手が右サイドでビルドアップに関わる場面が、試合序盤にありました。多分、浦和さんはサンプソン選手にボールを持たせようとしていたのだと思います」

「高橋はな選手の空中戦対策として、サンプソン選手を最終ラインに置いていました。しかしながら、攻撃に移った際のボールの運び出しが上手くできないという問題がありました。それで土光選手を最終ラインに入れ、攻撃面の良さを発揮しようと思っていました。空中戦対策をとるのか、それとも自分たちのビルドアップ(の改善)をとるのか。この判断を私が行い、ポジションチェンジをしました」

「サンプソン選手に関しては、膝の不調により制限時間45分(前半のみ出場させる)と決めていました。彼女を残す(先発させた)ことでセットプレーから点を取れたのは良かったと思います。ただ、サンプソン選手が中盤へ上がり、土光選手が最終ラインに下がったことで、高橋はな選手にボールを収められる場面が何度か見受けられました。そこでやられた感(高橋に自由にプレーされた感)はありますね」


池田咲紀子 写真:Getty Images

緻密だった浦和の守備