また設備コストを考えても、光分解装置自体は太陽電池より安く作れるとしても、燃料電池で発電するとなれば、トータルの設備コストで有利になる保証はない。これを火力発電に使うようでは、効率が40%程度に落ちるので、光分解の効率を38%近くまで上げないと競合できない。

それでも、水から光分解で水素を安く得られるなら、意義は大きいと私は思う。水素は貴重な化学物質なので、これを化石燃料由来でなく入手できることには意味があるからだ。水素は二次エネルギー(=エネルギー媒体)として使うことには種々の難があるけれども、現代化学工業の中では重要なカギ物質の一つであるから。

以上をまとめよう。水素を二次エネルギー(=エネルギー媒体)として使うことには、エネルギー収支的にも経済的にも困難が大きい。現在の水素の二大供給方法である、化石燃料系統と再エネ電力による電気分解のいずれにおいても、である。

故に、現在国策として進められている水素政策は、すべて速やかに廃棄すべきである。国家予算の無駄遣いであるのだから。経産省はじめ中央官庁は自らの誤りを決して認めないとの「伝統」があるようだが、そんな伝統はすぐに捨て去るのが良い。論語にも、間違えたらさっさと改めなさいとあるではないか。

片や、第三の道である水を太陽光分解して得られる水素は、エネルギー源とするには太陽光発電との競争に勝たないといけないので前途は厳しいが、化学原料としての用途があるので技術開発を進めるのが良い。