この種の試みは、どれもこれも先進国ドイツで失敗に終わっていると言う教訓を全然活かせていないし、なぜ税金をつかってまで高い水素を支援するのか、何の説明もない。
グリーン水素が抱える根本的な問題私は以前から何度も指摘しているのだが、再エネ電力から水素を作る「グリーン水素」には、本質的な欠陥がある。元々二次エネルギーである電力を使って水素を製造することそれ自体だ。
再エネで作った電力を、そのまま使うのが最も効率的であることは、子供でも分かる。しかも、水素はそのままでは使えず、燃やして熱にするか、燃料電池で発電して電力にしないと使えない。つまり、電力と違って水素は純粋な二次エネルギーとも言えない存在なのだ。当然、その変換過程でエネルギーは目減りし、その分コストは高くなる。電力による水素製造という本質的な矛盾がそこにあり、技術開発などでは解決出来ない性質の問題だ。
水素は燃やしてもCO2が出ないともて囃されるが、それならば電力の方がずっと優れている。使ってもCO2はもちろん水さえも出ない。電線1本で輸送でき、そのままで各種機器を動かせる。
グリーン水素の「言い訳」として、貯蔵が効く点が挙げられるが、それならば他の蓄電方法と比較してコスト的またはエネルギー的に有利であることを実証すべきだが、そうした例にはお目にかかっていない。
概算だが、電力→水素→電力の変換効率は、実用レベルで約6割(燃料電池使用の場合)なので、2段階経ると約36%に落ちる。水素を燃やして発電したら、その効率は40%台なので総計20%台に下がる。水素を途中で圧縮などすると、もっとエネルギーは減る。
これに比して、揚水発電では効率がほぼ70%である。貯水用のダムが必要だが、大規模な燃料電池発電所よりは建設・運転が楽なはずだ。そもそも、大規模な燃料電池発電所などというものは、今の所、構想さえもない。その昔、サンシャイン計画の頃に一時検討されたが、見込みが立たず断念するしかなかった。要するに、グリーン水素の言い訳に「電力貯蔵可能」を挙げても、所詮は無理筋なのだ。