これらは豪州・欧州いずれも、水力・風力・太陽光などの再エネ電力から水素を製造する、いわゆる「グリーン水素」事業の試みであるが、一様に挫折の憂き目に遭っている。

水素先進国ドイツの現実と課題

さらには、ドイツの水素充填ステーションで起きた爆発事故も、ドイツ全土に波紋を広げている。ドイツでは全国82ヶ所の水素ステーション中、36ヶ所が限定的な営業しかしておらず、燃料電池車の走行に影響を与えているとされる。

つい最近も「水素移行:ドイツは高価な大失敗に直面している」との記事が出た。7つの研究機関による最近の調査によると、ドイツの産業界における水素への転換は、他国に比べてかなり高価になる可能性があるとされる。つまり、産業界で水素利用を進めると、製造原価がかなり高くつく見込みになると。これはある意味当然である。安い石炭や天然ガスの代わりに高い水素を使うのだから、不利に決まっている。

水素先進国ドイツでは、上記のように様々な水素計画を実行に移そうとして非常に真面目に努力したが、多くは報われず、現場では爆発事故さえも起きて種々の困難に直面しているのが現状だ。

私の考えでは、ドイツはこれから水素計画を根本的に見直すことになると予想する。過去の技術開発の例を見ても、ドイツは石炭液化や高速増殖炉などの開発にいち早く取り組んで一時は最先端に立ったが、技術的・経済的な見込みが立たないとなると見切るのが早く、さっさと撤退しているからだ。何につけ、一度決めるといつまでもしがみついて離さない日本とは対照的である。

その日本では、東京都と東京商品取引所が、昨12月23日に再エネ電力で製造されるグリーン水素のトライアル取引の入札結果を公表している。供給側は300円/m3で落札、一方利用側の価格は89円または230円/m3で、その差額は都が支援して解消すると言う。つまり、税金で高い水素を買い支えると言うわけだ。