一方、第7次エネルギー基本計画案であるが、P33~41にかけて我が国のエネルギー安全保障、エネルギーコストの抑制に関する原子力の必要性・重要性を再認識し、最大限活用していくことが詳細かつ明確に謳われていることは、我が国の産業・経済にとって死活的に重要なポイントであり、特に原発を有する会社の敷地をまたいだ建て替え、新設を可能とする政策、次世代原子力の開発、実用化を進めていくことが明示されている(P40)ことも、まことに重要かつ欠くべからざる政策であって、今回の基本計画案の肝となっている。

加えて、今回の基本計画案では経済効率性に焦点を当てて、P15で

「今後、さらなる脱炭素化を進めていく上では、エネルギーコストの上昇も想定されるが、エネルギー多消費産業を中心とする製造業では、国際的に遜色のない価格でエネルギー供給が行われるかが重要な要素となる。」

としていて、これはまことにもっともな論点である。実際、欧州では再エネ普及や排出権取引制度などの脱炭素化政策の結果、域内エネルギーコストの上昇を招き、産業の空洞化・リーケージを招いて社会の不安定化が深刻になっている。

またわが国でもこの10年あまりの温室効果ガス排出削減実績は、2030年のNDC(46%削減)実現に向けてオントラックとされているものの、その削減に実際に貢献しているのは東日本大震災で停止していた原発の再稼働が進んでいる効果とともに、鉄鋼をはじめとしたエネルギー多消費産業の活動量(生産量)低下による排出削減効果が大きく、実際には欧州の轍を踏み始めている兆候との指摘もある。

このように産業生産活動が国外に移転し、あるいは国内産業が国際的な競争力を失って輸入品に代替が進むことが、手っ取り早く日本の排出削減を進める道であるが、それは日本社会の窮乏化による排出削減であり、政府の掲げるGX戦略による経済成長とは決して両立せず、欧州同様に日本社会の不安定化、不安拡大に繋がり、決してサステナブルな道筋にはならない。