最初は精神病患者の歯を無作為に抜歯することから始めました。

細菌に感染した歯を抜くことで精神疾患が治ると信じていたからです。無理に抜歯を受けた患者の中には、うまく喋れなくなったり、食べ物を咀嚼できなくなった人が続出したといいます。

さらに抜歯しても患者に改善が見られない場合、コットンは外科手術によって臓器をランダムに摘出する暴挙に出始めました。

彼が摘出の対象にしたのは膵臓や大腸、胃、卵巣、睾丸などです。

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コットンから抜歯を受けた患者の口内のイラスト/ Credit: en.wikipedia

また当時はその治療法にどれだけの効果があるかを調べるため、同様の治療を受けなかった患者と改善具合を比較するといった方法が確立されていませんでした。

そのため、コットンは自身が行った治療効果を誤ったデータでしかまとめていなかったのです。

そして彼は「抜歯や臓器の摘出により精神病患者の85%に改善が見られた」と報告し、改善が見られなかった患者については「細菌の感染が広がりすぎていて、すでに手遅れの状態だったため」と述べています。

まさに独断と偏見にまみれた報告でした。

ところがコットンの狂気じみた治療法は、当時の精神医学界により「革新的かつ最先端の治療方法だ!」として大いに称賛を受けたのです。

しかし精神病院に入院していた当の患者たちは、次第にコットンのやり方に違和感を抱き始めます。

実際は3人に1人が死亡していた⁈

コットンが自身の成功を高らかに謳っていた一方、その陰では狂気じみた治療のせいで、実際は患者の死亡率は上昇していました。

一時は入院患者の3人に1人が手術後に死亡していたといいます。

この事態に「明らかに何かおかしい」と感じたのが入院患者たちです。

彼らはコットンの手術の危険性に気づき、手術室に行くことを拒否し始めました。

病院のスタッフたちにより無理やり手術室に連れて行かれた患者が「抵抗して叫んでいた」様子が目撃されています。