しかし研究者たちがデータを分析したところ、プレーヤーたちはレベルアップやクエスト受注など、日常的に行っていたアバターの成長やゲーム内報酬につながる行動を放棄していることが明らかになりました。

この結果は、世界が終わる直前には、人々は自らの成長につながる行動や日常的な業務の遂行に興味を失ってしまう可能性を示します。

ですが最も興味深い洞察は「解約者」と「最後の瞬間までいる人」の比較によって得られました。

世界終末が迫っても多くの人類は道徳を放棄しない
世界終末が迫っても多くの人類は道徳を放棄しない / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

ゲーム世界の終焉が迫ると、終焉に先んじて自らのアバターやアカウントを自分の意思で消去してしまう「解約者」と呼ばれる人々がいることが知られています。

放っておいても消えてしまうデータを、サービス終了前に「わざわざ」時間を割いて自分で削除するという行動は、極めて興味深いものです。

今回の研究では、この興味深い「解約者」にフォーカスしてどんな行動変化がみられるかを調べてみました。

すると自らの意思で早期に終了する「解約者」たちは「最後の瞬間までいる人」に比べて、自らのアバターを削除する直前に、他のプレイヤーに対する「殺人(プレーヤーキル)」など反社会的行動を行う確率が非常に高いことが判明します。

研究者たちはゲームを自分の意思で早期に終了した人々は「責任感とゲームへの愛着」を失ってしまっており、それが反社会的行動につながったと述べています。

※類似する行動に拡大自殺という他者を巻き込んだ自殺が存在することが知られています。

一方、大多数の人々は終わりの時が近づくにつれて、社会的なグループ(ギルドやパーティー)の人々とチャットを行い、幸せな感情を示すことがわかりました。

そして世界の終わりが目前に迫ると小さなチャットグループ数がピークに達し、最後の瞬間まで仲間との絆を確かめ合っていたのです。

この結果は、本当の世界終焉の際にも、多くの人々は自分の大切な人々と一緒に過ごすことを選ぶ可能性が高いことを示唆します。