そして私たちには、ある状況で自分の意思を決定する際に、他人の意思や行動を参考にする傾向(社会的証明という)があります。
強い意見を持っていない大部分の人は、グループの3分の1が同意見だった場合、その意見を真剣に捉え、自分の考えに取り入れるようになるのです。
こうした経緯で、グループの全体的な意見は急激に変化します。
このような傾向は、カンターの研究から「黄金の3割(Critical Mass Theory)」としても知られています。
この理論でも、集団の中でその存在を無視できないグループになるための分岐点は30%であり、それを超えることで集団に変革が生じると考えられています。
最近だと、多くの企業が経営的成功に繋がっているようには見えないにもかかわらず、DEI(多様性実現の取り組み)を積極的に取り入れていることを奇妙に感じているかもしれません。
しかし、こうした組織の意思決定にも「魔法の三分の一の法則」が働いている可能性があります。
ただこうした事例を考えると、組織を変革する際の現実的な道筋が見えてきます。
変革を求めるなら、3分の1の「臨界点」を目指して努力すべき
「魔法の三分の一の法則」や「黄金の3割」からすると、組織を変革するための道筋が分かります。
日本の職場では、多くの場合、同調圧力が強く、少数派の意見が埋もれる傾向にあります。
しかし、少数派が3分の1以上になると状況は一変する可能性があります。
例えば、女性のリーダーや外国人社員が3割を超えると、組織文化やコミュニケーションスタイルがより多様で柔軟になります。
これによりイノベーションが促進され、より持続可能なビジネスモデルが生まれる可能性があります。
同様に、学校教育においても、授業中に多様なバックグラウンドを持つ生徒が一定の割合を占めるようになると、クラス全体の議論が活性化し、異なる視点を尊重する価値観・雰囲気が育まれます。