たとえば、9人の取締役会に女性が1人だけ加わった場合、その意見は多数派に押されて取り入れてもらえる機会は少なくなります。
では女性が2人いればどうでしょうか。
状況は少し変わるかもしれませんが、組織の方針はここでは変わりません。
しかし、女性が3人加わり、取締役会の3分の1を占めると、組織の意思決定において大きな影響力を持つようになります。
カンターの研究は、少数派が一定の割合を超えることで、組織内の考え方や行動が劇的に変化する可能性を示しているのです。
経営に携わっていない労働者たちからすると、急に会社の方針が転換されて驚くこともあるかもしれません。
彼らの目には、経営陣に追加された1人か2人が、組織全体の考えをいきなり変えたように見えるからです。
では、組織やグループでは、なぜこのような変化が生じるのでしょうか。
「例外」が「例外でなくなる」
「魔法の三分の一の法則(The Law of the Magic Third)」は学術的な用語ではありませんが、この考えのポイントは、グループには「例外が例外でなくなる」タイミングがあるということです。
グループ内の半数以上の意見が同じであれば、グループ全体がその意見に流れるのは当然です。
では、10分の1の人たちだけが特定の意見を支持している場合はどうでしょうか。
彼らの意見は少数派というよりも「例外」です。
そのため、1割の例外的な意見は、グループの意思決定に大きな影響を与えることはできません。
しかし、その意見を支持する人が3分の1を超えるとどうでしょうか。
まだ多数派ではないものの十分な規模であり、明らかに「例外」としては見られなくなります。
他のメンバーは、3分の1の意見を無視するのではなく、真剣に考え始めます。