共同通信に依頼されて、昨年11月刊のエマニュエル・トッド『西洋の敗北』を書評しました。1月8日に配信されたので、そろそろ提携する各紙に載り始めるのではと思います。

ずばり1行目が、

ウクライナはロシアに敗れると、薄々みんなが気づき出している。

で始まる私らしい書評ですが、センモンカ批判は今年から自分の書物にまとめていきますので、今日はトッド氏の著書に則した話を。

専門書と一般書にまたがって、膨大な著作を持つトッドですが、本書ではこれまでのキャリアに照らしてかなり異色の境地に至っています。その点については、先日ご紹介した浜崎洋介さんとの対談でも、こう触れました。

前回の記事と同じく『文藝春秋』2月号の、第二特集は豪華な識者が世界各国の危機を論じる「崩れゆく国のかたち」。私と浜崎洋介さんの対談「SNS選挙は民主主義なのか」も載っています!

『西洋の敗北』を読んで、現状への悲観ぶりに驚きました。トッドは従来、家族構造や伝統宗教など、容易には覆らない社会の土台を分析の軸に据えてきたのに、同書によれば今日の西洋のどの国を見ても、もはやそうした確たる基盤は「ない」と。個人がアトム化し、なにも信じないニヒリズムだけが広がっている。