となると昆虫は海にいた甲殻類から進化したわけですから、海に戻るには少しばかり退化すればいいだけのような気もします。

現に海から陸に上がって、また海に戻った生物の例はあります。

イルカやクジラがそうです。

イルカやクジラの祖先はもともと海にいて、一度陸に上がって4本足となり、そこからまた海に舞い戻り、長い年月をかけて4本足をヒレへと変化させました。

ただこれを「退化」と呼ぶのは不適当であり、「適応進化」と呼ぶ方が相応しいでしょう。

なので、昆虫も海に戻るにはイルカやクジラのように適応進化すればいいのですが、これがムリゲー状態になっているのが現況です。

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Credit: canva(ナゾロジー編集部)

一応ですがウミアメンボのように、確かに海に住んでいる例外的な昆虫はいます。

しかしウミアメンボは海表面を漂っているだけであり、海中に潜ると死んでしまうので、完璧に海に適応しているかというと疑問です。

またユスリカやゲンゴロウの中にも海水で生きていけるものがいますが、彼らがいるのは浜辺の小さな海水だまりのような場所です。

ただ「ゾウアザラシシラミ」という、アザラシの体に寄生して深い場所まで潜れる昆虫もいますが、これは異例中の異例であり、昆虫全体としてはやはり海には適応できていません。

それはなぜなのか、現時点で最も有力な説を見てみましょう。

海と陸では「外骨格のレシピ」が全然ちがう!

「なぜ昆虫は海に進出できないのか?」

この問題はもう100年以上も前から議論されていることです。

これまでの説としては

1)塩分など海水環境に適応できない理由がある

2)水圧で体内の気管(昆虫が呼吸に使っている器官)が壊れてしまう

3)魚による捕食圧が高すぎる

4)昆虫が海で獲得できるニッチ(生態系での地位)が、甲殻類によって占有されており、後からつけ入る隙がない

といった様々な仮説が立てられています。

ただどの仮説も推測の域は出ておらず、科学的にスッキリした説明は提唱されていませんでした。