なお、日本では2006年に特定動物に指定され、2020年6月から愛玩飼育は禁止されています。
アメリカドクトカゲは、砂漠など獲物が少ない環境で生活するため、見つけると食い溜めしますが、食事の前後で血糖値がほぼ変動しないことが知られていました。
また、1980年代にアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)が、アメリカドクトカゲなど特定のトカゲやヘビの毒がインスリンを作る膵臓に炎症を引き起こすという研究結果を発表していました。
そこに注目したアメリカの科学者ジョン・エング(John Eng)氏は、1992年にアメリカドクトカゲの唾液腺から抽出した物質をエクセンディン-4と名付けて解析し、人間のGLP-1というホルモンによく似た構造・機能であることを突き止めました。
GLP-1は、食後に小腸から分泌されるホルモンで、膵臓からのインスリン分泌を促進して血糖値を下げる作用がありますが、数分でDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)という酵素により分解されてしまいます。
これに対し、エクセンディン-4はGLP-1と同様の作用を持ちますが分解されにくく、数時間活性を保つことができ、インスリン分泌能が低下する2型糖尿病の治療薬として大きな可能性を秘めていたのです。
そして、エクセンディン-4を基に生まれた新薬は「GLP-1受容体作動薬」と総称され、2005年に初めてアメリカで2型糖尿病治療薬として承認を受け、日本では2010年に承認されました。
現在まで研究が重ねられ、IQVIAの調査によると、2023年の世界医薬品売上データでオゼンピックが2位、トルリシティが7位、マンジャロが10位と10位以内に3種もランクインしており、いずれも2兆円を超える売上でした。