有毒生物は危険で厄介な生き物。
しかし本当にそうなのでしょうか?
アメリカドクトカゲ(学名:Heloderma suspectum)といういかにもな名前の有毒生物が実は現代医療で大活躍しています。
彼らの「よだれ」から発見されたエクセンディン-4(exendin-4)は、GLP-1(glucagon-like peptide-1)というインスリン分泌に関連する人間のホルモンに似た構造であることから、2型糖尿病の治療薬の有効成分として使用されています。
さらに、オランダ・ラドバウド大学医療センター(Radboud University Medical Center)のマーティ・ボス(Marti Boss)氏らは、エクセンディン-4を利用した新たな検査技術を開発し、従来の検査技術では検出困難だったインスリノーマという膵臓の腫瘍を高精度で検出することに成功しました。
研究の詳細は、2024年10月17日付で科学誌『The Journal of Nuclear Medicine』に掲載されています。
目次
- アメリカドクトカゲの「よだれ」から開発された2型糖尿病治療薬が活躍
- 検出困難であった腫瘍の検査技術も向上
アメリカドクトカゲの「よだれ」から開発された2型糖尿病治療薬が活躍
アメリカドクトカゲは、アメリカ南西部およびメキシコ北西部に生息し、別名ヒラモンスター(Gila monster, 「ヒラ川の怪獣」の意)とも呼ばれています。
体長は最大で50cmに逹し、野生下では鳥の卵やヒナ、小型哺乳類などを食べます。
その名の通り有毒で、下顎に毒腺があり、獲物に噛み付くと奥歯を伝って傷口に神経毒を送り込みます。
人間が噛まれると激痛が走り、眩暈や吐き気、重篤の場合はアナフィラキシーショックなどの症状が出ます。
死亡例は稀ですが、2024年2月にアメリカ・コロラド州でアメリカドクトカゲを違法飼育していた男性が手を噛まれ、死亡する事故が発生しています。