メラニンの多い人は肌の色が濃くなり、日射量の多いアフリカでは人体を守るために肌が黒くなります。
通常の生活ではドームやシェルター内にいるとしても、屋外で活動しなければならない機会も多いため、人類は火星の紫外線から肌を守るために色が黒くなると見られます。
その4:低酸素環境への適応
先ほど言ったように、火星の大気は地球とまったく異なるため、移住者たちは効率よく酸素を取り込む術を身に付けなければなりません。
これと同じ適応はチベット高原に暮らす人々において実際に確認されています。
標高4000メートル級のチベット高原では、酸素濃度が海抜0メートルの地表に比べて40%も低くなっています。
そこでチベット人は血液の流れを改善する密度の高い毛細血管を発達させたり、遺伝的に酸素の運搬能力を高める適応を示しているのです。
これと同様の適応が火星の入植者にも起こると予想されます。
その5:免疫系の低下(あるいは消失)
火星にはいまだ生命の痕跡が見つかっていません。
ということは火星環境には細菌やウイルスも(人間が持ち込まない限り)存在していないと考えられます。
そのような無菌環境で暮らしていると、細菌やウイルスから体を守る必要もなくなりますから、私たちに備わっている免疫系が弱体化し始めます。
またソロモン氏はその状態で世代交代が続いていくと、最終的には免疫系そのものが消失する可能性もあるといいます。
以上の5つの適応進化が完了してしまうと、もはや火星の移住者は地球にいる私たちと遺伝的に異なる種になっていると言えるでしょう。
そうしてソロモン氏は、火星で新たに誕生する人種を「ホモ・サピエンス」とはまったく別の「ホモ・マルシアヌス(Homo martianus)」と名づけています。
(火星【Mars】に暮らす火星人は英語で【Martian】と呼ぶことから)
ホモ・マルシアヌスは人類と比べて、見た目も身体機能も遺伝子も地球人とは全くの別物に変わっているはずです。