カルフーンの前提によると、生物が生きる上での脅威は主に5つにまとめられています。
その1:住む場所を失うこと
その2:食糧不足に陥ること
その3:異常気象や悪天候に晒されること
その4:細菌やウイルスなどの病気にかかること
その5:自分を食べたり殺そうとする天敵がいること
これらはすべて、高度な文明を築いた私たち人間にもそのまま当てはまりますね。
そこでカルフーンはこの5つの脅威を完全に排除したマウスのパラダイス空間を作りました。
具体的には、縦横2.7メートルの四辺を高さ1.4メートルの壁で囲い、その中に16個の巣穴と256個の居住エリアを設置。
水や食料は壁伝いで無制限に得られるようにし、衛生状態にも入念に注意して、エアコン等で常に快適な気温を保ちました。
もちろんマウスを襲う天敵もおらず、カルフーンの見積もりによると、最大3000匹のマウスが無理なく暮らせる環境でした。
楽園が整ったら、いよいよ実験開始です。
最初はオスメス4匹ずつ、計8匹のマウスを楽園に投入しました。
実験に使用されたマウスたちの寿命は約800日です。マウスにとって10日が人間の1年ほどに感じられるため、この歳月は人間に換算するなら80年くらいです。
楽園に放たれたマウスは当初、見ず知らずの慣れない環境にかなりの戸惑いを見せました。
しかし水や食料はいつでも好きなだけ手に入るし、天敵もいない、いつも快適な気温が続くことがわかると、全員がのびのびと暮らし始めます。
だだっ広い楽園の中で、各々が好きな巣穴や居住エリアを棲み家とし、みんなが何不自由なく平等かつ快適に生活するようになりました。
そうして実験開始から104日目、ついにオスとメスのつがいから最初の子供「楽園ベイビー」が生まれます。
カルフーンは、マウスが楽園生活に慣れてから最初の子供が生まれるまでの期間を「フェーズ1:適応期」と呼びました。