洞窟で回収された頭蓋骨に髄を得るために骨を割ったり、歯でかじられた痕跡が残っていたのです。
ただこれは日常的に人肉を食料としたり、飢えに迫られた苦肉の策ではなく、葬儀の一環として行われていた慣習だと見られています。
さらに時代をグッと飛び越えて、1150年代の米コロラド州南西部でも食人行為があったことがわかっています。
先住民の遺跡で見つかった人の排泄物の化石から、人間の筋肉に存在するタンパク質「ミオグロビン」が検出されたのです(Nature, 2000)。
これは先住民が人肉を食べたことを物語っています。
またイギリス人が17世紀初めにアメリカで初めて建設した植民地ジェームズタウンでも恐ろしい食人行為の証拠が見つかりました。
考古学チームが2013年に、ジェームズタウンの遺跡で見つかった14歳の少女の遺骨を調べたところ、誰かの手で意図的に骨に穴が開けられ、顔の肉が削ぎ落とされ、脳が取り出されていたことがわかったのです。
歴史的な調査によると、この当時、ジェームズタウンの植民者たちは厳しい生活環境から飢餓状態にありました。
1609年の状況を記した文献には、村の食糧が完全に底をついて、植民者たちはネズミやヘビなどのありとあらゆる野生動物を食べ尽くした後、致し方なく人肉食に手を染めたことが記録されているのです。
それからもっと現代に近い時代にもカニバリズムは起こっています。
特に有名なのは1972年に起きた「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」です。
これはウルグアイ空軍の航空機がアンデス山脈に墜落した大事故であり、乗員乗客45名のうち29名が死亡、16名は72日間に及ぶサバイバルの末に生還しましたが、彼らはその間、飢えを凌ぐために死者の人肉を食べて生き延びたのです。