フェルミ粒子が同じ場所をシェアできない理由は、同じ座標を占めると波動関数が完全に重なって区別がつかなくなり、フェルミ粒子特有の“マイナス符号”が作用して波動関数がゼロ(=物理的に起こらない状態)になってしまうからです。

リチャード・ファインマンはこの現象について「同じ量子状態に二つの電子が来ようとすると、確率振幅(wave amplitude)が 位相のひっくり返り(phase flip) を起こして消えてしまう」と述べています。

たとえば、ダンスに例えるならば「同じ席に2人が座ると、2回入れ替えのステップで踊りが崩壊する」ようなもので、それ自体がルール違反として“存在できない”わけです。

一方、整数スピンの粒子(ボソン粒子)にはそんな裏返し(マイナス符号)が生じないので、複数が同じ場所にぎゅっと重なっても波動関数は問題なく成立します。

実際、たくさんの光子(ボソン粒子)が一つのレーザー光に“束ねられる”のは、こうした性質によるのです。

つまり波動関数がプラス側であるボソン粒子は重なっても大丈夫でフェルミ粒子はマイナス側にいくことがあるため同じ場所を共有できない、というわけです。

一方でパラ粒子の場合は、入れ替えるたびに「プラスかマイナスか」に単純には収まらず、まるで複数のパズルピースが回転・組み替えられるかのように状態が混ざり合うマトリックス(行列)変換を起こす可能性があります。

イメージとしては、ボソン粒子やフェルミ粒子なら円形か三角形かどちらかしか存在しないとされていたパズルに、四角形や星形が追加されるようなもので、「ここから先は新しい形が組み込めるかも」と期待されているわけです。

もうひとつの重要なポイントは、パラ粒子の「排他原理」に関する独特の性質です。

繰り返し述べているように、フェルミ粒子は「同じ量子状態を絶対に共有できない」(定員1名の超絶厳しいルール)で、ボソン粒子は「いくらでも共有OK!」(定員無制限)という対照的なふるまいを示します。