彼らの研究は、フェルミ粒子やボソン粒子では説明できない新しい準粒子「パラ粒子」を数学的にモデル化し、それが物理的に観測可能であることを示したのです。

この発見の鍵となるのは、新しい数学的フレームワークです。

これまで鉄壁だった「フェルミ粒子とボソン粒子だけ」という常識が打ち破られた場合、宇宙の真の姿は、物体を構成する粒子とエネルギー伝達する粒子という2元論では記述できないことが示されるでしょう。

新たに実在性が示された「パラ粒子」とはいったいどんなものなのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年1月8日に『Nature』にて「フェルミ粒子とボソン粒子を超えた粒子交換統計(Particle exchange statistics beyond fermions and bosons)」とのタイトルで発表されました。

目次

  • フェルミ粒子でもボソン粒子でもないパラ粒子
  • 数学の力で「ありえない粒子」をあぶり出す

フェルミ粒子でもボソン粒子でもないパラ粒子

既存の標準理論では観察可能な物体はフェルミ粒子とボソン粒子で構成されていると考えられています
既存の標準理論では観察可能な物体はフェルミ粒子とボソン粒子で構成されていると考えられています / Credit:名古屋大学

フェルミ粒子とボソン粒子の2元論を疑え

パラ粒子(パラ統計)の概念が最初に大きく注目されたのは、1950年代に物理学者ハーバート・グリーンが提唱した理論がきっかけです。

当時の量子力学では、あらゆる粒子は「フェルミ粒子」か「ボソン粒子」のどちらかに分類されるという常識が確立されていました。

電子や中性子のような物体を構成するフェルミ粒子は、いわゆるパウリの排他原理によって「同じ状態に二つ以上が入れない(1個しか占有できない)」という特徴を示します。

一方、ボソン粒子の代表例は光子(光の粒)で、無数の粒子が同じ量子状態を共有できる性質を持っています。

実験的にも、この区別は多くの物理現象と見事に合致していたため当たり前のルールとして広く受け入れられていました。