もっと噛み砕いて説明しましょう。
プルトニウム239の中心部には「原子核」があり、ここに外から飛んできた極めて小さな粒子である「中性子」がぶつかると、原子核が不安定な高エネルギー状態になります。
するとプルトニウム239の原子核は2つに分裂し、同時に中性子を飛ばします。
この中性子が近くにある別のプルトニウム239にぶつかると、また同じような核分裂反応がネズミ算式に広がります。
これが連鎖反応です(下図を参照)。
こうした核分裂の連鎖反応を瞬間的に引き起こして莫大なエネルギーを発する兵器が「原子爆弾」というわけ。
核分裂の際には「放射線」も放出されるので、実に危険です。
そして最も重要なこと、それはプルトニウム239が放っておいても勝手に核分裂を起こして中性子を放出することです。
「じゃあ、ルーファスを持っておくこと自体あぶねーじゃん」と思うかもしれませんが、心配いりません。
自然状態で核分裂したものは外部に逃げ去っていくので、先のような連鎖反応を起こさないからです。
ただし!ルーファスから発生した中性子が外に逃げられないような障壁を設ければ、他のプルトニウム239にぶつかって連鎖反応が起こります。
ここまでの前提を知っておけば、ダリアンの実験がいかに危険かがわかります。
では彼が何をしたのかというと、ルーファスの周りに中性子を反射できる重たいブロックを積み重ねて、それをルーファスに近づけたり離したりしたのです。
これがどれだけ危ないかわかるでしょうか?
ブロックをルーファスから離していれば、中性子も外に逃げる隙間があるので連鎖反応は起きません。
しかしブロックをルーファスに近づけると、中性子の逃げる隙間がなくなって連鎖反応が起きます。
ダリアンはブロックをルーファスに限界まで近づけて、連鎖反応が起きるギリギリのラインを調べようとしたのです。