しかも当時は手動でブロックを持ち上げたり、降ろしたりしていました。
そして悲劇は起こります。
ダリアンがブロックを動かそうとした際に、誤ってルーファスの上にブロックを勢いよく落っことしてしまったのです。
その瞬間、核分裂の連鎖反応が起こり、研究室には一瞬にして青白い閃光が走りました。
連鎖反応はおよそ2分続いたとされ、この間にダリアンは約5.1シーベルトの放射線を浴びています。これは2人に1人が死んでしまう被曝量です。
案の定、ダリアンは強い吐き気を催して嘔吐し、病院に救急搬送。
放射線が彼の生体機能を破壊して、事故から25日後には帰らぬ人となりました。
こうしてルーファスを使った核実験は終わった…かと思いきや、ほぼ同じ実験を始めた恐れ知らずの科学者がまた現れるのです。
第二の惨事:マイナスドライバーを滑り落としただけなのに…
次なる惨事を引き起こすのは、同じくマンハッタン計画に参加していたカナダの物理学者ルイス・スローティン(1910〜1946)です。
スローティンはダリアンが亡くなった翌1946年に、再びルーファスを使った危ない実験を行いました。
ダリアンの時と違うのは、ルーファスに近づけたり離したりするブロックを変えたことです。
スローティンは中性子を反射できる金属「ベリリウム」を用いて、球体のルーファスをすっぽりと包める上下の鉄腕を作りました。
イメージとしてはアボカドを半分に割ったものを想像してもらうとぴったりでしょう。
中心の種がプルトニウムの球体であり、それを挟む上下の鉄腕がアボカドの実です(※ ただし、上部の鉄腕は動かしやすいように下部より小さく作っていました)。
上側の鉄腕を完全に閉めずにおけば、中性子が外部に逃げられるので連鎖反応は起きずに済みます。
そこでスローティンが何をしたかというと、なんとベリリウムの鉄腕の間にマイナスドライバーを差し挟んだだけだったのです。