しかし、この垂直の柱を立てるための足場はどこに立てたのでしょうか。
これは未だに解明されていません。素朴なひとつのお堂が国宝になっている理由はここにあります。
どうやって投入堂を建てたのか。懸造の、あの垂直の柱を立てるための足場はどうしたのか。答えがわからぬまま全身が感動に包まれていきます。これが国宝の力……。
道なき道を苦労して登った甲斐があったという思いを抱きつつ、帰り道は元来た道を辿ります。首尾よくここまで登れたご褒美に、実は帰りは楽な道が用意されているということはありません。
帰り道も行きと同じ道で、行きと同様に危険です。遭難したら大変なので気を抜かずに降りましょう。山登りは下りの方が危険だといいます。
下りきれば山の中とはいえ、そこは普通にお寺です。静寂の中、さっきまでの苦闘は何だったのか。投入堂を見たのが夢だったのかというほどの環境の違いに、いっそすがすがしい気分になっているかもしれません。
投入堂は、実際にそこまで登ってみると役行者が投げ入れたと言われても不思議に感じないほど、崖の窪みに唐突に立っているお堂です。
そして「見に行くのが日本一危険な国宝」と呼ばれ道なき道をよじ登っていく、遭難の危険すら感じるところもある参道を自力で登らなければならないのです。
投入堂の参拝登山は「三徳山入峰修行」と呼ばれます。物見遊山ではなく修業だということを心して登りましょう。
日本国内に数ある懸け造りですが、未だ解明されないその建築方法の三徳山三佛寺にある投入堂。地震にも台風にも大雪にも耐え、しっかり崖の窪みに建ち続けている投げ入れ堂は、日本の建築史に謎のまま残り、現在に至っています。
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参考文献
三徳山三佛寺 国宝投入堂ホームページ
https://www.mitokusan.jp/