「日本一、見るのが危険な国宝」と聞いて、あなたはどんな建物を想像しますか?

鳥取県の名湯・三朝(みささ)温泉で知られる三朝町の奥深く、険しい山中にその国宝は存在します。

その名は“三徳山三佛寺・投入堂(なげいれどう)”。

崖の窪みにまるで“投げ入れた”かのように建てられた懸造(かけづくり)の古刹は、修験道の霊場としても知られ、その謎めいた佇まいから「どうやって建てたのか未だにわからない」とまで言われるほど。

役行者(えんのぎょうじゃ)なる伝説の行者の“法力”が関わったという逸話も相まって、投入堂は訪れる者の想像力を掻き立てます。

ところが、この国宝にたどり着くまでの道のりは文字通り命がけ。足元は獣道さながら、時に鎖場をよじ登ることすらあるのです。

今回はそんな“謎とスリル”に満ちた国宝・投入堂の魅力や、同じ鳥取県にある懸造の寺院建築をめぐる物語を、存分にご紹介していきましょう。

険しい道の先に待つ絶景と、不思議に包まれた古刹の世界へ、いざ出発です。

目次

  • 懸造とはどんな建築か
  • 投入堂はなぜ激レア建築なのか
  • ところで、役行者(えんのぎょうじゃ)って誰?

懸造とはどんな建築か

鳥取県中部に位置する三朝(みささ)町は、自然豊かな山あいに広がる温泉地として広く知られています。

中でも「三朝温泉」は、長い歴史と良質な湯が評判で、湯治場として古くから人々に愛されてきました。

ラドン含有量が高い温泉としても有名で、温泉街には昔ながらの旅館や情緒あふれる町並みが続き、訪れるだけでほっとできる雰囲気が魅力的です。

そんな三朝町の山深い一角に鎮座するのが、修験道(しゅげんどう)の霊場として知られる「三徳山三佛寺(みとくさん さんぶつじ)」。

開山の正確な時期ははっきりしていない部分もありますが、古くは飛鳥・奈良時代にさかのぼるとも言われ、数多くの仏堂が山中に点在しています

三徳山三仏寺は鳥取県東伯郡三朝町に位置する山の中。三朝町は温泉で有名
三徳山三仏寺は鳥取県東伯郡三朝町に位置する山の中。三朝町は温泉で有名 / credit: Google Map