管制官から滑走路手前の停止位置までの走行の指示と、離陸の順番が1番目だということを意味する「ナンバーワン」ということばを伝えられたとき、「『滑走路に入って待機してください。あなたの離陸順位は1番です』と言われたと思った」と話したということで、これを根拠に挙げています。

NHK記事にある両者のやり取りは次のようだ。報告書は、本来は滑走路への進入許可を受けた後に行う離陸前点検を、機長が副機長に離陸の順番を伝えられた直後に行うよう指示し、副機長が実施していたことも、機長の誤認を推察した理由に挙げている。

[午後5時45分14秒] 管制官「JA722A(海上保安庁機)、東京タワー、こんばんは。ナンバーワン。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」

[午後5時45分18秒] 海保機副機長「滑走路停止位置C5に向かいます。ナンバーワン。ありがとう」

[午後5時45分21秒] 海保機機長「ナンバーワン」

[午後5時45分22秒] 海保機機長「C5」

[午後5時45分23秒] 海保機機長「問題なしね」

[午後5時45分24秒] 海保機副機長「はい、問題なしでーす」

[午後5時45分25秒] 海保機機長「はい、じゃあ、離陸前点検」

またNHK記事に拠れば、海保機の機長は聞き取りに対し、基地とのやりとりに一部が重なるタイミングで「管制官から離陸の許可が出た」と話しており、さらに滑走路手前の停止位置を通過する際のことについては、副機長と共に「滑走路に入って待機」と復唱し、左右を確認して進入したと話しているとのことである。

上記の[午後5時45分18秒]までの両者のやり取りは事故発生直後に報じられていた。筆者はそれを読み、「もしあの時、管制塔が海保機に対して『滑走路に進入してはダメ』と付け加えていたら、海保機は『滑走路に進入しない』と復唱したはずだ」と、「否定語」を付け加えることの重要性を述べた。