ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難治で進行性の神経内科疾患に関しては、5年後の国民投票おいて検討されるとよいと考えます。これらの疾患では、耐えがたい苦痛があったとしても、余命6か月とは診断できないため、より慎重な議論が必要になります。前述の4項目の1.は、「病気は徐々に進行して回復の見込みはないこと」となります。
安楽死の議論をする場合には、対象者を限定した上で議論するべきと私は考えます。そうしなければ緻密な議論にはなりません。
現在のスイスやオランダでは、日本人の想像を超えた範囲の疾患が安楽死の対象となっています。次の3つのカテゴリーに分けて議論するべきです。
安楽死A:余命6か月以内と診断されている癌などの患者を対象 安楽死B:徐々に進行し回復の見込みのないALSなどの神経内科疾患の患者を対象 安楽死C:うつ病などの精神疾患、認知症の患者を対象
安楽死Aに反対する人は比較的少ないと考えられます。一方、安楽死Aには賛成であっても、安楽死BやCに反対する人は少なくないことが予想されます。特に安楽死Cは欧米でも反対する人が多いようです。それぞれについて議論することが大切です。十把一絡げの議論は建設的ではありません。
安楽死Aでは耐えがたい痛みや苦痛が問題となるのに対して、安楽死Bでは人間の尊厳の喪失が問題となる場合が多いように思われます。尊厳喪失の理由としては、「しもの世話を何年にもわたり他人にしてもらうこと」などが挙げられます。
参考までに安楽死Bに該当する人の発言を書籍(p.188)より引用しておきます。
「たぶん私は、末期癌だったら安楽死は選んでいないと思うよ。だって期限が決まっているし、最近なら緩和ケアで痛みも取り除けると言われているでしょ? でも、この病気は違うの。先が見えないのよ」
安楽死の手続きに関しても、政令・省令で明文化して、恣意的に変更できないようにしておく必要があります。手続きとは、安楽死の申請後の待機期間、意思確認の回数、立会人の人数、実施時のビデオ撮影の有無、実施後の報告の仕方、報告内容を検証の方法などです。
- 自己決定権の問題