一方、「自分が困っていても助けてくれる人は少ないだろう」と考える傾向が強かったのです。
ではなぜ日本人はそのように考えるのでしょうか?
2つ目の実験では398名のアメリカ人と381名の日本人を対象に、「自分が困難や苦痛に直面しているのは、社会規範や秩序をはみ出したり、違反した報いである」と考えるかどうかに回答してもらっています。
すると、日本人はアメリカ人に比べて「自分が困難や苦痛に直面しているのは、自分が社会的規範や秩序を違反したからだ」と考える傾向が強かったのです。
この考え方は他者に対しても同様であり、日本人の多くは「困難に直面するのは自業自得だ」と考えていました。
そして、このように考える傾向が強かった人ほど、共感的関心(困っている人への思いやり)が薄いことも示されました。
それゆえ日本人は困っている人への思いやりや同情心が薄くなり、「誰かが自分を助けてくれる」という期待値も低くなることで、社会的支援を求めづらい環境に繋がっているというのです。
実際に日本はイギリスやフランス、スウェーデンなどの先進諸国に比べて、生活保護の申請率が低く、現に生活保護を利用できている人の割合も低いというエビデンスがあります(PDF)。
イギリスやフランス、スウェーデンでは、生活保護を利用する資格のある人のうち、実際に利用できている人の割合は90%に達していますが、日本では20%ほどしかありません。
この背景には、今回の研究で示されたように、「自分が困っているのは自分のせいであって、生活保護を受けるのは恥ずかしいし申し訳ない」といった思い込みや「誰かが苦しんでいるのはその人の責任であって、こちらが助けるいわれはない」といった意識につながっている可能性があります。
確かにネット上でも、困っている人に対して「自業自得だろ」と冷淡な反応を見かけることは多く、「確かに」と同意してしまう人も多いかもしれません。