一度は人民解放軍の将校が、軍艦を使ってビールを輸入しないかとか言ってきて唖然としたとか(笑)

なんか、「こういう有力者に取り込んで特権的なビジネスを立ち上げてそこに出資する」のに最も熱心かつ最も成功してたのはシンガポールの国有ファンドだ・・・っていう話も面白かったです。

そうそう、あとは北京空港関連のプロジェクトをやるにあたって許認可権限持ってる官僚たちをまとめてロサンゼルスに接待旅行につれてったら、現地についてからある有力官僚が心臓が痛いというのでアメリカの病院につれてったら・・・

そこで「絶対安静」ってお医者さんに厳命されたのに本人が「仲間と一緒にラスベガス行きたい」って言い張るから無理して行かせたら案の定心臓発作が起きて死にかかり、必死で病院につれてって緊急手術で命を助けた・・・結果、「俺達の兄貴の命を救ってくれたお前は香港人だけど俺達の仲間だ」って事になって急激に話が通るようになった話

・・・みたいな、「香港映画に出てくる”マフィアの下っ端の気の良いマヌケキャラ”のドタバタ劇じゃないんだから」みたいな感じで面白かったです。

こういう「面白い話」が大量にある本なので、ぜひ手にとってみていただければと。

3. 無茶苦茶なようで合理性もある汚職経済の全貌

で、ここまででこの本の「面白さ」は伝わったと思うんですが、それに加えて非常に考えさせられるのは、こういう「汚職経済があることの合理性」みたいなものもまたあるような感じなところなんですよね。

本の中では、北京空港に隣接した最新型の物流センターのプロジェクトを筆者夫妻が手掛ける話がかなり詳細に出てくるんですが、こういう

「野心的な海外留学帰りの斬新な発想」が「有力者の権力」と一体となることで、ゴリゴリと押し通して一気に実現してしまえるという一定の合理性

…は、まあ賛否両論あるとしても事実としてあるなと。

これが、「中国製造2025」計画とか、最近の中国の電気自動車が世界を席巻しつつある成功に繋がっている面は明らかにある。